特殊治療

通常の涙道手術のほか、極めて特殊な治療も提供しております。

1. 結膜涙嚢鼻腔吻合術(ジョーンズチューブ)

抗がん剤TS-1や外傷の後遺症など、涙小管に強固な癒着が生じてしまった場合、従来のチューブ挿入術や涙嚢鼻腔吻合術ではなみだ目の症状を治す事ができません。このような再建不能な涙道閉塞に対し、目がしらから鼻腔へガラス管を留置し、直接涙液を排泄させる治療法があります。ガラス管は永久に入れておく必要がありますが、あらゆる涙道閉塞に対応できる方法です。

JT眼内

右眼所見。目がしら部分にガラス管の入口部が確認できます。

JT鼻内

左鼻内所見。鼻腔にガラス管の出口部が確認できます。

1.適応

重症の涙小管閉塞(抗がん剤TS-1副作用、外傷性涙小管断裂後など)

2麻酔

全身麻酔で行います。日帰りでの治療が可能です。

3.手術の流れ

まずは通常の涙嚢鼻腔吻合術(DCR鼻内法)を行ったのち、目頭の粘膜を切開し鼻腔へつながる皮下トンネルを作成します。その後ジョーンズチューブと呼ばれるガラス管を挿入し終了します。

4.所要時間

手術は20分程度で終了します。

4.合併症や注意点

ガラス管はステントとしての役割があり、永久留置を要します。そのため、小さなトラブル(汚染・脱落・埋没・位置ずれ・炎症など)はほぼ必発です。定期的なメンテナンスを行う必要があり、永続的な通院が必要です。

その他、涙嚢鼻腔吻合術に準じた注意点(鼻出血や疼痛など)は「涙道」の項をご参照ください。

2.鼻中隔弯曲症に対する鼻中隔矯正術

左右の鼻腔をわける中央の「仕切り」を鼻中隔と呼びます。鼻中隔は加齢とともに左右どちらかに曲がってゆきますが(鼻中隔曲症)、曲がりの程度が強く涙嚢鼻腔吻合術(DCR)の操作に支障がある場合には、仕切りを正中に整える矯正術を行う必要があります。

鼻中隔が左側に強く弯曲しており(矢印)、左鼻腔が狭く涙道手術の遂行に支障が出ています。

当院での鼻中隔矯正術後。鼻中隔はほぼ正中に移動し(矢印)、左鼻腔が良好に広がっています。

1.適応

鼻中隔曲のため、涙嚢鼻腔吻合術(DCR)を行う側の鼻腔が非常に狭い症例
(※鼻閉改善目的での矯正術は行っておりません。耳鼻咽喉科へご相談ください)

2麻酔

全身麻酔で行います。日帰りでの治療が可能です。

3.手術の流れ

涙嚢鼻腔吻合術(DCR)と同時に行います。まず鼻の入り口から1cm付近の粘膜を切開し、曲した鼻中隔軟骨と骨を部分除去します。十分に鼻腔が拡張されたら、通常のDCRに移ります。

4.所要時間

手術は15分程度で終了します(DCRの時間を除く)。

4.合併症や注意点

術後は両方の鼻腔にガーゼパッキングを行います。口呼吸での生活となりますので苦しさがありますが、翌日または翌々日に抜去しますので心配はありません。危険性としては、出血・感染・疼痛などがあります。ほかに、鼻中隔の血腫・穿孔、また非常にまれですが軟骨や骨を除去しすぎると鼻すじが低くなること(鞍鼻)が生じるとされています。

3. 結膜弛緩症けつまくしかんしょう

白目の部分(結膜)が異常にたるんだ状態をさします。結膜には適度なゆるみがあり、上下左右などの眼球運動に耐えられるようになっていますが、このゆるみが平均より強い状態を結膜弛緩症といいます。

1.症状

結膜がたるむと、たるんだ結膜が涙点をふさいでしまい、「涙があふれる=涙目」の症状をもたらす場合があります。そのほかに、目のかすみ、目の充血、ショボショボするといった目の不快感を生じます。また、弛緩結膜がよく動くことから、結膜の毛細血管が引っ張られて、結膜下出血の原因となります。結膜下出血を繰り返す方にはしばしば結膜弛緩症がみられます。

2原因

原因はよくわかっていませんが、加齢とともに増える傾向があります。そのほか、コンタクトレンズ装用も悪化要因となることもあります。

3.治療方法

(1) 点眼治療:人工涙液や抗炎症薬にて症状の軽快をはかります。
(2) 手術治療(点眼で改善がない場合)
手術は局所麻酔にて行います。手術時間は約5分(片目)程度です。従来はメスを使用し、たるんだ結膜を切開して糸で縫合していたため、手術時間は長く術後の異物感も強く出ました。当院では熱凝固のみでの簡易的な方法で行いますので、手術時間も短く、術後の回復も大変早いです。凝固法で治癒しきらない重症例にのみ、従来の切除方法を追加することにしています。